木材を知る
成田完二の 勝手にコラム   その他 002
 木は植林をするときに目的を決める。
 ゆっくりと成長させたい場合は間隔を詰め、開ければ成長が早くなる。
 桶や樽などは年輪が密な方が良く、船は軽くて大きな板が欲しいので、その逆になる。建築用材は、中央は年輪が広めで、外に行くほど密な方が曲げなどに強い。そのため広めに植え、間伐で調整しながら育てる。
 これは、和歌山県田辺市の林業の方から教わった話。それまで建築をやりながら木のことはほとんど学んでこなかった。その地域では木材を江戸に運んでいて、今も関東が主な市場と聞いた。
 
 木が育つには早くて5、60年、梁などの太いものは100年掛かる。100年前に植えたものが、人の手を介しようやく建築用材になる。
 では、先述の樽や船の木材はどうなったのだろう。船や樽の需要は無くなり、建築材に回っている。船用の木材は太く大きく育っているので売りやすく、樽用は密度は高く上質かもしれないが、細いので値が張らない。一世紀掛けて育ててきたものが、安く買いたたかれるのはいたたまれないだろう。
 
 コロナの影響が意外なところに出てきた。米国の住宅需要の急増である。おかげで北米材の輸入が止まったと聞く。
 ある森林組合に伺ったところ、引き合いが増えたと明るい声。それは国産材にとって良いことだろう。ただ、輸入材が国産に代わっただけではなく、使うこちら側が、良く特性を知り、生かした使い方をしたいものである。
全国商工新聞 2021.5
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