NA.home通信 120号

                 29.nov.1998

 サンタクロースになりすますのは、父親の仕事の中で難しいものの一つである。
 パートのおばさんに包んでもらったら、値札が残っていたり、包み紙に店のロゴが付いていたりで、冷汗をかいたことが数度ある。

 友人のT氏は、店員に強く言って正札や包装紙に気を使わせて、ゲームソフトを買ってくると枕元に置いた。朝嬉しそうに子供が包みを開けると、
「パパ、サンタさんもファミコン堂で買うんだね」
ドキンとしながら知らばっくれて、「どうして」って聞くと
「だって、サービスカードが入ってるモン」
 短気なT氏は店員の首を絞めに行ったに違いない。

 ついに夢を壊す日が来た。
「今年から、サンタさんに代わっておとうさんがプレゼントを買ってやろう」と、2人の子を連れて近くのおもちゃ屋へ。そこは年に1度のかき入れ時でごった返していた。
 何が良いかと見ていると店員が大声で呼んでいる。

「秋田犬のお客様、秋田犬のお客様、お待ちどう様でした」

 秋田犬の客というのはどんなだろう?
 忠犬ハチ公みたいなのが財布ぶら下げて…と考えていると今度は

「セーラームーンのお客様、セーラムーンの…」と呼ぶので、

「これは見なきゃ」と行ってみるとセーラームーンの客は、長い髪に超ミニスカートと思いきや、眼鏡かけて、髪を振り乱してあかんぼを負ぶっているではないか。そうか、日頃はこのような姿に変えているのか。

 子どもばかりか私も夢をなくしたクリスマス前の一日であった。


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