NA.home通信 132号

                 9.aug.1999


 小学校の低学年の頃、夏休みには亀崎の実家で毎日セミ捕りをして遊んでいた。
ところがセミを捕れば捕るほど疑問が出てきた。
本ではセミは「ミーン、ミーン」と鳴くことになっているが、ミーンミーンと鳴くセミに出くわさないのである。ミーンミーンと鳴くセミを探して、毎日セミを捕っていたような記憶がある。

 5年生の夏、親父の実家の飛騨に行き、従兄弟とラジオ体操に行った帰り、低い木にとまるセミを3年生の従兄弟が手づかみにした。
それは見たことのない緑色で透明の羽があるちょっと細身のセミだ。彼が腹を触ると何と「ミーンミーン」と鳴くではないか。
「ミンミンゼミだよ」と当たり前のように言う。そういえば周りにいるセミもミーンミーンと鳴いている。その感激は今も忘れない。
昆虫学者ではないが、知多半島、名古屋近辺にはミンミンゼミはいないと断言した。

 「名古屋のセミはミーンミーンとは鳴かない」と言うと「セミはミーンミーンと鳴くだろ」と反論するヤツが必ずいる。だったら、ミーンミーンと鳴くセミはどういうセミかと尋ねると言葉に詰まってくる。
ヤツも見たこと無いんだ。ザマーみろ。

 本やテレビなどのメディアの影響は大きい。一方的な情報を鵜呑みにしてしまい、人から研究心を剥奪してしまう。
許せないのは間違った情報を平気で流すことだ。これでは受け取る側はよほど疑ってかからないといけない。テレビを見ていると、いい加減で腹立たしいことがずいぶんある。

 今日も朝から30度近い。せめてセミが「ミーンミーン」と鳴いてくれたら、高原のさわやかさが味わえるのに。と思いを消し去るのは「ジュアジュア」と暑苦しく鳴くアブラゼミの声だ。


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