NA.home通信 453号
12.Aug.2018

 読書感想文、なんで毎年この宿題があるのだ。
 図書館も本屋も嫌いな子どもが本なんか読むはずがない。字の大きな童話や伝記などは読んだ。何か得るものがあるとは思えず、全く興味が無かった。
 最後まで出さなかったら、「夏休みの感想でも良いから」と先生の方が折れてきた。
 
 だいたい建築士になる人間は本を読まないし、書かない。そんな人間が建築士会の編集委員になった。そこでぶつかったのが筆無精の壁。
 締め切りは守らない。催促すると過去の似たような記事を見て右に倣えで書いてくる。支部報告などは支部対抗ソフトボール大会の集合写真に一年間の行事を箇条書き。それが毎月続く。支部が変われど見た目変わらず。
 禁止令を出すと写真が研修旅行に変わり、後は同じ。
 そんな中身で読まれる会報など出来やしない。如何に読まれる編集をするか、最大のテーマだった。
 会員に読まれることをあきらめ、家族や従業員に読んでもらえる内容に転換した。読み物はなるべく平易な言葉で。
 幼稚園の子でも解るように噛み砕いて書いて下さい。と、お願いする。
 「建築士の先生に失礼では?」。それは全くありませんからと。
 会報ながら定価がついている。第三種郵便のためなのだが、毎月、栄の事務局まで買いに来てくれいる一般の方がいることが解ったときは、委員一同うれし涙にくれた。
 
 その委員会で、はがき通信の先輩に影響され、これをはじめたし、少しずつ本も読むようになった。
 最近は出張で移動時間が多いので、必ず文庫本を持っていく。三行読んだら寝ていたものが、何時間も列車に揺られながら読み続けている。俺も修行が出来てきたな、と思う。
 読むスピードも上がったようで、先日の高松は往きで1冊読んでしまい、ホテル近くの本屋で続編を買った。
 ジーンズの後ろポケットに文庫本を突っ込み、リュック背負って西へ東へ。なんとなく放浪詩人のようだ。

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